＜びわ湖の午後66＞アンドレアス・シュタイアー　メディテーション ～チェンバロによる瞑想

アンドレアス・シュタイアーは1955年ドイツのゲッティンゲン生まれ。デビューした1980年代初頭は「バックハウスやケンプ以来の、ドイツ音楽を代弁するピアニスト」と賞されていました。1983年から1986年の間、古楽器アンサンブル ムジカ・アンティクァ・ケルンに在籍し、チェンバロ奏者として活躍しました。その後独立し、フォルテピアノとチェンバロのスペシャリストとして真摯に自らの芸術を極め、今や鍵盤楽器奏者として「巨匠」への道を着実に歩む数少ない実力者として広く認められています。


アンドレアス・シュタイアー公式HP　https://www.andreas-staier.de/

前半は、バッハに大きな影響を与えた４人のバロック期の作曲家 フィッシャー、フックス、クープラン、フローベルガーの楽曲です。これらは中世より脈々と歌い継がれてきたグレゴリオ聖歌の動機が織り込まれており、連続して演奏することで強い関連を感じられます。
後半は、作曲家でもあるシュタイアーが2020年に作曲した「アンクレンゲ ～チェンバロのための6つの小品」。「古楽」とは過去の音楽作品をその時代の楽器（ピリオド楽器）や奏法で演奏することを言いますが、シュタイアーはピリオド楽器を過去の音楽の再現にとどめず、現代の音楽に活かし作曲することの意味を長年にわたって問い続けてきました。特に4曲目の「プレリュードとフーガBWV878への様々な接近」はバッハに触発されて作曲した楽曲です。
最後はシュタイアーがインスパイアされたそのバッハの「平均律クラヴィーア曲集 第2巻」より「プレリュードとフーガ ホ長調 BWV878」でリサイタルを締めます。
中世のグレゴリオ聖歌に端を発し、バロック期の作曲家たちやバッハを通じて現代に至るヨーロッパ音楽の時の流れを解き明かす絶妙なプログラムです。奏者として、作曲家としてのアンドレアス・シュタイアーだからこそ実現したと言っていいでしょう。