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2023年3月29日(水)
公演

「北村朋幹 20世紀のピアノ作品(ジョン・ケージと20世紀の邦人ピアノ作品)」が「第22回佐治敬三賞」を受賞しました

2022年10月8、9日の2日間にわたり開催しました「北村朋幹 20世紀のピアノ作品(ジョン・ケージと20世紀の邦人ピアノ作品)」の「第22回佐治敬三賞」受賞が決定いたしましたので、お知らせいたします。

本企画は、演奏者の北村朋幹氏とびわ湖ホールが綿密な打ち合わせの上、プログラムを決定し、実施した企画です。

なお、びわ湖ホールが佐治敬三賞を受賞するのは初めてです。

受賞公演

北村朋幹 20世紀のピアノ作品(ジョン・ケージと20世紀の邦人ピアノ作品)

<贈賞理由>

「北村朋幹 20世紀のピアノ作品(ジョン・ケージと20世紀の邦人ピアノ作品)」は滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 小ホールで行われた「20世紀の邦人ピアノ作品」と題された演奏会(10月9日)と、その関連企画として滋賀県立美術館エントランスロビーで開催された「北村朋幹×ジョン・ケージ」という演奏会(10月8日)で構成されていた。メインはびわ湖ホールでの演奏会であるが、北村にとって後者におけるケージの《プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード》全曲は邦人ピアノ曲と時空を超えて応答し合う関係なのではなかったろうか。

武満徹の《2つのレント》に始まり、福島和夫《水煙》、柴田南雄《ピアノのためのインプロヴィゼーション第2番》、八村義夫《彼岸花の幻想》、松村禎三《ギリシャによせる二つの子守歌》、甲斐説宗《ピアノのための音楽》と続き、石井眞木の《ブラック・インテンションIII-息のためのピアノ練習曲-》に終わる、1960年代から70年代の作品を中心とした演奏会は、アンコールに演奏された高橋悠治の《秋のオーロラ CANTO I》を含めて実にさまざまなスタイルとアイディアを盛り込んだものであった。アンコールの高橋以外はすべて故人となった作曲家たちのピアノ曲を、こうした形でまとめてプログラム化するピアニストは、21世紀の現在そうはいない。そして、それらはかつて作曲者たちが存命中に頻繁に採り上げられていたころの演奏とはまったく異なったもの、すなわち不可視の歴史の襞を確実に感じさせつつも、時間の距たりのなかで変容してきた、純粋に今の視点から捉え直された作品として、どれもこよなく新鮮に響いた。作曲当時のアイディアを超えて、作品が新たな生命を吹き込まれつつ、不死性へと架橋された瞬間を聴き手は目の当たりにしただろう。

石井作品では舞台上でのピアノのプリペア(弦の間にねじやゴムを挟み、特殊な音響を作り出すこと)をも演奏の一部として感じさせながら、内省的で濃厚な時間の持続を途切れさせることなく、いわば北村自身の高密度の宇宙を描くような演奏会は聴き手に強いインパクトを与えた。

関連企画として行われたジョン・ケージ作品の演奏会は、オープンな空間で出入り自由の公演であったが、各回100人ほどの聴衆が各々の角度から聴き入り、誰も出ていこうとしなかった。事前に慎重に行われていたピアノのプリペアは、それ自体が「解釈」であり、同時に「演奏」の一部だったと言えるだろう。澄み切って、同時に深みのあるタッチで長大な作品が克明に描き出され、特に後半はひたすら演奏の集中力が増していくのが感じられた。今という時間上にある日本だからこそ生まれ得た思索的な演奏であり、北村の創り上げる宇宙はここでもひとびとを魅了してやまなかった。

(長木誠司委員・伊東信宏委員)

第22回(2022年度)佐治敬三賞 https://www.suntory.co.jp/sfa/music/saji/