『インドへのいざない』シタール奏者 石濱匡雄に聞く

西洋のクラシック音楽に混じって、バリ・ガムランや北欧伝統楽器、日本の箏、尺八、三味線の響きの素晴らしさも伝えて来た「びわ湖の春 音楽祭」。今年は、「インドへのいざない」と題して、インド古典音楽と古典舞踊の魅力を伝えてくれる。日本を代表するシタール奏者 石濱匡雄に話を聞いた。
――シタールを弾くきっかけは何だったのですか。
中学3年の時に、同級生からギターを勧められたんです。親に相談したところ、やるんだったら先生についてキチンと教われと言われて。ちょうどそのタイミングで、家の近所にシタールの教室が出来ました。弦楽器やった何でも同じだろうくらいの感じで教室を訪ねて、通うことに決めました。明らかにギターとは違うのに、どこに惹かれたのか思い出せない(笑)。
――インドに対しての知識はあったのですか。
全然。インドは完全に後からです。神戸元町の高架下(モトコー)の楽器屋に行き、小遣いで買うと言ったら安くしてくれました。それから2年ほど弾いていたら、ひび割れが発生。修理はインドのカルカッタでしか出来ないと言われ、国内旅行もした事ない高校生が一人で出掛けました。行ってみるとインドの食文化や住環境が自分に合っていて、何度か行き来している間に師匠に弟子入りし、短大卒業と同時にインドに移住。稽古を重ねながら現地での生活に馴染んでいくうちに、自然と舞台のお仕事もいただけるようになりました。
――シタールもタブラも難しい楽器だと聞きます。
シタールの弦は20本。実際に弾く弦とは別に共鳴弦があり、あの独特な倍音の響きを生み出しています。シタールもタブラも難しそうと言われますが、僕はどの楽器も一定の水準を超えると難易度は同じだと思っています。西洋楽器の奏者が言う「技量に差があっても支え合い、ハーモニーを作るアンサンブルの楽しさ」という感覚は、僕にはあまりありません。シタールやタブラは基本的に一人で音楽を成立させる楽器で、人前で演奏できるレベルに至るまでには長い時間をかけて技術を磨く必要があります。その上で、技術が拮抗した奏者どうしだからこそ、即興が冴え渡り、より刺激的な演奏になるのです。
――今回の公演について教えてください。
北インド古典音楽の煌びやかなシタールの調べと、複雑なタブラのリズム。そして、南インド古典舞踊の中でも最も歴史のあるバラタナティヤムを、踊り手のダヤ・トミコさんとともにお届けします。大地を踏み鳴らす力強いステップと、繊細な表現の両方を堪能していただける内容です。
ダヤさんは僕たちの大先輩ですが、歯切れの良いステップと、長年の経験に裏打ちされた豊かな感情表現が大きな魅力だと思います。
北インドと南インド、それぞれの古典芸能の醍醐味を一度に味わっていただける公演です。
――メッセージをお願します。
西洋クラシック音楽を中心とした音楽祭の中で、「インドへのいざない」と題し、インドのクラシック「古典」に触れていただける機会をお届けします。
インド音楽の旋律や、神話をモチーフにした舞踊作品は、同じアジアに生きる私たちにとって、西洋クラシックとはまた違った親しみを感じていただけるのではないでしょうか。
限られた時間ではありますが、インドのクラシック「古典」の魅力を感じていただけるプログラムをご用意しました。ぜひ当日はびわ湖ホール中ホールへお越しください。お待ちしております。
聞き手:磯島浩彰(音楽ライター)
《公演情報》