声種もキャラクターも異なる「びわ湖ホール四大テノール」

2010年当時、びわ湖ホール声楽アンサンブルのテノールパートに所属していた清水徹太郎、竹内直紀、二塚直紀、山本康寛の4人で結成されたユニット「びわ湖ホール四大テノール」は、当時の音楽祭「ラ・フォル・ジュルネびわ湖2010」のメインロビー公演でデビューを飾った。オペラ歌手ならではのハイレベルな歌唱と、関西ならではのユーモアのセンスを融合させた親しみやすいステージは瞬く間に人気を博し、「テノールの明るい響きで、日本を元気に!」を合言葉に、びわ湖ホールはもとより、全国各地で公演を行ってきた。
コンサートの進行はほぼ決まっている。挨拶代わりの『琵琶湖周航の歌』から始まり、オペラのアリアなどを挟み、「テノールdeコント」では着ぐるみ姿で出し惜しみ無しのコントをこれでもかと披露。打って変わって燕尾服姿で、高音域のカンツォーネを見事に歌唱。テノールといっても声種もキャラクターも違うタイプの異なった4人が、よくぞ偶然に集まったものだと、彼らのステージを見ていていつも感心させられる。集まるべくして集まった4人。アンコールも第三部と数えられる彼らのコンサートは、ラストナンバーに向かってどんどん熱を帯び、盛り上がって行く。笑いと格好良さが同居するカタチの彼らのステージだが、ここまでのレベルに仕上げるには人知れず苦労も多かったはずだ。
試練は突然襲った。2020年4月、メンバーの二塚直紀が心筋梗塞のため急逝。日本人としては希少なパワフルで豊かな中音域をもつ「ヘルデンテノール」として将来を期待されていただけに、クラシック音楽界に与えたショックは大きかった。「四大テノール」の存続は難しいと誰もが思ったが、翌年「びわ湖ホール四大テノール フォーエバー」として復活。この時、スペシャルゲストとして出演したスターテノール福井敬の献身的な姿勢に感動した。苦難を乗り越え、5人目のメンバーに二塚の一番弟子 古屋彰久を迎え、再び走り出した「四大テノール」だが、試練は繰り返される。2025年3月にはメンバーの清水徹太郎が脳出血で倒れ、生死を彷徨うことに。しかし、不屈のリハビリの甲斐あって奇跡的に回復。今年1月の「2daysリサイタル」で見事に復帰を果たした。清水でしか出せない爽やかな高音の響きは健在で、会場からは万雷の拍手が起こった。
今回の「びわ湖の春 音楽祭」で「四大テノール」は、25日メインロビーでの無料の開会宣言(9:30~)と26日中ホール公演(16:30~)に出演が決まっている。ピアノはいつもお馴染みの作曲家 植松さやか。このユニットにおける彼女の存在は大きく、ピアノ演奏だけでなく、オーケストラを思わせるような大掛かりな編曲も担当し、実質的に「四大テノール」のメンバーの一人といえる。笑って泣いて感動して…。「びわ湖ホール四大テノール」の公演は楽しみが尽きない。
磯島浩彰(音楽ライター)