<気軽にクラシック36>森 季子 ロマン派のドイツ歌曲~いまいちど、原点に~

お知らせ・トピックス
- 2023年11月25日(土)アンコール曲
R.シュトラウス:万霊節 Allerseelen
平田あゆみ:忘れはしない、愛の日を
ご来場ありがとうございました♪
メッセージ
今回、副題として「〜いまいちど、原点に〜」と掲げさせていただきました。こちらは、私が、恩師から勝手に受け継いだものです。先生は覚えてらっしゃらないかもわかりませんが、ご自身のリサイタルに際してのインタビューでお答えになられたもので、学生の時にこの言葉を新聞の記事で拝見した時に、先生でさえこのように思われているのだから、私はこれから、常に原点に立ち戻ることを忘れずに歌と向き合っていなければならない、とその時に胸に刻み込み、持ち続けてきたものです。
原点というのは、まず、ドイツリートという原点。
学生時代、京都市立芸術大学という素晴らしい大学に入学させていただいたにも関わらず、自分の歌というものがなかなか見つからず、伸び悩む時期を過ごしておりました。漠然とですが、自分は歌手としては生きていかれないだろうから、しかしせめて歌に関わる仕事は選びたいな…などと考えて、舞台に関する制作や技術スタッフを目指し始めていた時期がありました。その道を初めから目指している方にとっては失礼な話なのですが、そのことが功を奏してと言いますか…舞台の裏側から演者を見るという視点がいつの間にか、歌というものの本質について考えるキッカケとなり、そんな中のある日、シューベルトの「ます」をレッスンしてもらったら、突然、自分の歌が歌えたのです。ひとの真似ではない歌です。「見つかったね」と仰ってくださった先生の一言が忘れられません。ここが私の原点となりました。
そして、もうひとつの点として、ウィーンという原点。
私が感謝をしているもうひとつの場所です。
あの「ます」の日から、私のドイツリートとの対話が始まり、少しだけ立体となり始めた頃、大学院2回生の時、京都の青山音楽記念館で開催したドイツリートによる人生初のソロリサイタルで、今回も演奏する『女の愛と生涯』を歌わせて頂きました。そのリサイタルが「歌曲が音楽と文学の融合であることを改めて感じさせてくれた演奏」という評を受け、2005年度の第15回青山音楽賞新人賞という賞を賜りました。そちらで頂いた研修費でウィーンへの留学を決めました。ドイツリートの中に吹く風を感じられるようになる為、というのが留学の目的でした。
ウィーンは素晴らしい街でした。活気があり、古きものと新しきものが同居して、色んな国の人々が住んでいて…まるで京都のようだなと感じて暮らしていました。その中で、自分の歌の「テーマ」のようなものも、手に入れることができました。でも、ウィーンで受け取ったものは、全てがいいものばかりというわけではありませんでした。それがまた、よかったのです。憧れは現実となり、現実となると憧れは、憧れと離れたものになってしまいます。だからこそ、私にとってウィーンは、いまでも夢半ばの、憧れの街として私の中に残り続けてくれています。ものは言いようと言われれば仕方ありませんが、私にとって音楽は、永遠の夢で、永遠の憧れです。今も変わらないウィーンへの憧れと感謝を込めて、ウィーンを代表する作曲家を取り上げることと致しました。
びわ湖ホールでは、声楽アンサンブルの在団中からオペラの舞台に数多く立たせていただき、びわ湖ホールのお客様に限らず、森季子は「オペラ歌手」だと思ってくださっていると思います。オペラは役を演ずること、また時間をかけてひとつの物語を辿るのですが、歌曲は短い時間で心情を詰めるところが違います。ただ、私の中では根本的な作り方はオペラと歌曲は決して別物ではなくて、どちらにおいても、その作品のもつ性格と、言葉のもつ温度に寄り添うこと、そして祈りを込めることにこだわりを持っています。シューマンやマーラーなどのツィクルスにおいては特に、オペラの舞台で増やした発声や表現の引き出しが役にたっているなぁと感じます。この15年間のオペラの舞台での出会いや、学びを歌曲の世界にも活かして取り組みたいと思います。
また今回、ご一緒させていただく河原忠之先生とは、びわ湖ホールのピノシリーズが演奏家としての出会いでした。それまでは勿論、多くの演奏会で一方的に拝聴させて頂いており、先生の音の生まれる瞬間に幾度となく感動しておりました。ピノシリーズでは團伊玖磨の歌曲集でご一緒したのですが、その時に先生が、私がドイツリートを歌うことを瞬時に見抜いてくださり、とても驚きました。なお一層、先生の音楽への愛や、あたたかいお人柄にも惹き込まれ、わがままを言いまして、この度の共演が叶いました。先生の懐の深さに感謝致しておりますし、とっても楽しみにしております。
「気軽にクラシック」というシリーズにも関わらず、ウィーンロマン派のドイツリートをどっぷりと集めて、いまの私の全てを精一杯お届けします。皆さんのお馴染みの曲だけでなく、ドイツリートの持つ深い魅力を感じていただければと存じます。どうぞご期待ください。
森 季子
出演&スタッフ
河原忠之(ピアノ)
公演概要
日時
詳細
びわ湖ホール声楽アンサンブルとしても数々のオペラ公演に出演してきた森 季子が自身の原点というドイツ歌曲を歌います。
ピアノは、声楽家からの信頼厚い河原忠之がつとめ、充実の1時間をお贈りします。
[曲目]
シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン D.118
音楽に寄せて D.574
ます D.550
春の信仰 D.686
マーラー:「リュッケルトの詩による5つの歌曲」より
私はほのかな香りをかいだ
美しさゆえに愛するのなら
私はこの世に忘れられた
シューマン:歌曲集「女の愛と生涯」 op.42 全曲
チケット情報
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友の会
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077-523-7136