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びわ湖ホールの未来に新たな軌跡を創り上げる

3月のびわ湖ホールプロデュースオペラは、プッチーニの『ラ・ボエーム』。
これまでヴェルディの日本初演シリーズでもお馴染みのソプラノ 浜田理恵さんが14日に登場する。
プッチーニは浜田さんが最も愛する作曲家という。『蝶々夫人』(06年・兵庫県立芸術文化センター)
『トゥーランドット』のリュー(08年・新国立劇場)と日本でのプッチーニが続いて
いよいよびわ湖ホールでミミを歌う。指揮の沼尻竜典芸術監督も、今年3月にプロデュースオペラ
『トゥーランドット』、7月には東京・新国立劇場の高校生のためのオペラ鑑賞教室で『トスカ』と
プッチーニづいている。フランス・トゥールーズ在住の浜田さんと、沼尻竜典芸術監督を
インターネットテレビ電話で結び、語り合ってもらった。

司会・構成=佐藤千晴〈朝日新聞記者〉

お二人ともプッチーニが大好きだそうですね。それぞれのプッチーニ体験を聞かせていただけますか?

沼尻:僕の最初のプッチーニ体験は高校時代、ミラノ・スカラ座の来日公演です。クライバーが指揮、フレーニがミミを歌った『ラ・ボエーム』。とろけるような音の感覚が今も体に残っています。留学したベルリン芸術大学の入学試験で『ラ・ボエーム』のボーカルスコアを初見で弾きましたし、入学後、指揮のレッスンで『トスカ』のピアノもやった。

浜田:私は客席で見た『ラ・ボエーム』の記憶がほとんどないんです。舞台では、トゥールーズでランザーニの指揮で歌いましたし、リヨンでもやったし、ずいぶん経験しているんですが。最近は『蝶々夫人』の方が回数は多くなりましたね。それから『トゥーランドット』のリュー。この3つの役が私が歌うプッチーニ。私がプッチーニを好きになる前に、私の声がプッチーニに合っていた。声の柔らかさや、ここぞというときに、ぱんと声を張ることを要求されます。それは私がとても大切に思っていることでもあるので、プッチーニを歌っている間は声をクリーニングしているような爽快感がある。仕事しながらリラクゼーションできるんです(笑)。声のことをここまで分かっている作曲家は何人もいないと思うんですよ。譜面を見るだけでおおっ、と思う。尊敬します。

沼尻:指揮者にとっては、振りながらその場の気持ちが反映できる懐の深さが魅力。普通はそんなことすると音楽が崩れちゃうんですが、プッチーニは違う。

 


インターネットテレビ電話で会話中の沼尻芸術監督

「ラ・ボエーム」という作品の魅力は?

沼尻:とてもシンプルなストーリーで、絶対泣けることは保証つきです。

浜田:可憐な女の人が死んでいくというのはプッチーニが大好きな女性像ですよね。私はミミを歌うとき、いつも幕ごとにまったく違う生き方を意識します。第1幕、ロドルフォとの出会いはつつましく。第2幕、クリスマスのパリの街角は青春。いつも舞台で楽しく遊んでます。私の歌う役の中で唯一、食事の場面があるのもうれしい(笑)。第3幕は絶望の中の暗い冬。ロドルフォを愛しているからこそ別れを告げる。私が命をかけているのは、この幕ですね。感情は盛り上がるけど抑えなきゃいけない。バランスを取りながら歌うのが大変ですけど、それが痛いような快感。

沼尻:第3幕の四重唱がある意味で音楽的な頂点だと思う。

浜田:そして第4幕、命が尽きる。時間が経過して変化していくミミを、声と大げさではない演技で表現していくのが喜び。いつもすごくこだわって歌います。

沼尻:演出によって、さまざまなミミ像がありますね。たとえば、第1幕の2人の出会いは、偶然なのか、それともミミが積極的にロドルフォを誘惑したのか。浜田さんはどちらが好き?

浜田:今は誘惑する方かな。声がリリコなので、ずっと純真な役柄ばかりでしたけど、最近、悪女志願なんです(笑)。

沼尻:最近のびわ湖ホールは悪女路線ですよ。『こびと』の王女様、『サロメ』、『ルル』。『トゥーランドット』も悪女といえば悪女。

浜田:その路線でも、ぜひ、歌わせてください。

 


ベルリン・コーミッシェ・オーパーでの公演

沼尻さんは今回のホモキさんの演出をベルリン・コーミッシェ・オーパーでご覧になったそうですが、どんなミミでしょうか。

沼尻:それはびわ湖ホールでの本番をご覧になってのお楽しみ、ということであまり明かしたくないんですが、ホモキさんらしく緻密に計算された舞台です。そして、ある部分はとても大胆。きちんとしたルールの中で新しい演出として見せられるのがホモキさんのすごさ。舞台にオーラがあります。

浜田:私はまだホモキさんの舞台を拝見したことがないんです。

沼尻:プッチーニの音楽には無駄な音が一つもないけれど、ホモキさんの演出も、フレーズごとにすべて意味を持たせる。音楽を分析する能力が素晴らしい。音楽家が触発されるような演出です。

浜田:そして第4幕、命が尽きる。時間が経過して変化していくミミを、声と大げさではない演技で表現していくのが喜び。いつもすごくこだわって歌います。

沼尻:演出によって、さまざまなミミ像がありますね。たとえば、第1幕の2人の出会いは、偶然なのか、それともミミが積極的にロドルフォを誘惑したのか。浜田さんはどちらが好き?

浜田:日本でオペラをやるときは、みんなで一緒につくりあげる一体感が強くて、それが楽しい。現場で時間を重ねることがとても大切で、「劇場マジック」みたいなものが生まれます。ヨーロッパでは歌い手がそれぞれ役をつくって劇場に持ち寄る感覚。その日の相手が誰だか分からなかったりすることも。私も『カルメン』のミカエラを歌ったとき、ホセを誰が歌うのか、当日、舞台の上で探したことがありました。

沼尻:ヨーロッパは集まったその日から立ち稽古ですからね。歌手はその時点ででき上がっているのが前提。ビジネスライクだし、シビアな世界です。歌手は国境を越えて移動して、あちこちの劇場で得意の役を歌っている。最近は演出も劇場持ち回りが増えたので、どこも舞台が似てきた。日本で制作する方がよっぽど個性的なプロダクションができるんじゃないかと思うぐらい。

浜田:日本の方が劇場それぞれの色が出はじめているかもしれない。昔は逆だったのに。

 


 

お二人のこれまでの共演歴は?

沼尻:去年の11月に大阪センチュリー交響楽団の定期で、ドビュッシーのカンタータ「放蕩息子」をやりました。

浜田:今までコンサートでの共演しかないので、オペラでじっくりお付き合いするのが楽しみです。私は日本のオペラ団体に所属していないので、一本釣りしてもらわないと日本で舞台に立つチャンスがなくて。

沼尻:びわ湖ホールのプロデュースオペラは、所属団体に関係なく、役のキャラクターに合った歌手を選んでいますから、海外組も関西組も東京組も一緒に舞台をつくります。

浜田:沼尻さんと私は同じ年の生まれなんですよ。ようやく同世代の指揮者と仕事ができる年代になりました。

沼尻:今回はスタッフにも若手が多いし、同世代が集まってつくるというやりがいがある。

浜田:40歳を過ぎて、年齢的にそろそろ面白くなってきたと思いませんか? 私は声が楽になったという実感がすごくあります。

沼尻:指揮も経験を重ねると、どんどん楽になっていく。

浜田:落ち着いて、いろいろなものが見えてくるようになったし。たっぷり時間をかけられるびわ湖ホールの現場で、沼尻さんとゆっくり話ができるのも楽しみです。ヨーロッパの劇場で日本人が歌うこと、日本発のオペラをつくること……語り合いたいことが山ほど。






パリのアパートの屋根裏部屋で、詩人ロドルフォ、画家マルチェッロ、音楽家ショナール、哲学者コッリーネら芸術家の卵達は、貧しいながらも夢のある共同生活をしている。クリスマス・イヴの夜、4人で街へ繰り出すことにするが、ロドルフォは一人残って原稿を書き上げてから行くことに。そこへ階下に住むお針娘ミミがロウソクの火を借りにやって来て、お互いのことを話すうちに2人は恋に落ちる。カフェ・モミュスにみんなが集まったところへマルチェッロのかつての恋人ムゼッタがパトロンを連れて現れる。まだお互いに惹かれ合っている2人は、ほどなくよりを戻すことに。2ヶ月が経ち、ミミはマルチェッロにロドルフォとうまくいっていないと相談するが、実はロドルフォがミミの病気を治してやる治療費がないのでやむなく冷たく接していたと知り、二人は愛を確認し合うも春になったら別れることを約束する。また、マルチェッロも浮気性のムゼッタと口論になり別れてしまう。さらに時が経ち、ロドルフォとマルチェッロは、それぞれの別れた恋人のことが忘れられずにいる。そこに瀕死のミミがムゼッタに連れられて現れる。ロドルフォとミミは昔の楽しかった日々のことを語り合い、ミミは愛するロドルフォのもとで静かに息を引き取る。



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